有名な芸能都市伝説の一つとして、「突然ガバチョ!の生首事件」があります。これは、タレントで落語家である笑福亭鶴瓶が司会するバラエティ番組『突然ガバチョ!』(1982年〜1985年)でささやかれた都市伝説です。
『突然ガバチョ!』は毎年夏になると、心霊写真コーナーが放送されていました。ある日、番組には一枚の心霊写真が送られてきました。
その写真は3人の女の子が映っていた写真で、それぞれ腕、足、首が写っていませんでした。
しかもそのうち、腕と足がない2名の女の子は事故でそれぞれ写っていない部分を失って死亡しており、首の写っていない女の子の一人だけが、唯一に健在だった人物なのです。
この怪談話に大きく興味を持った『突然ガバチョ!』のスタッフたちは、「呪いなんて絶対にあり得ない」ことを証明しようと、その女の子を鶴瓶たちのいるスタジオに呼び出して、生放送で事情を聞くことにしました。
生放送当日、その女の子と付き添いの母親は、毎日放送のスタジオ前にやってきました。しかし、そこで暴走した自動車が女の子に突っ込み、女の子は写真の通りに首を切断されて死亡してしまったのです。
突然に娘を失った母親は気が狂い、ちぎれた娘の生首を手にして、血まみれのまま、スタジオに乱入してきたそうです。そして、その模様がテレビで生中継されてしまった……という話なのです。
もしもこの話が事実であれば、これはテレビ史上最悪の放送事故であることは間違いないのでしょう。だが、この話は完全な作り話です。この噂を聞いた鶴瓶は、「そんなわけないやん」と、別の番組で笑いながら否定していたのです。テレビ局には多くの警備員がいるため、生首を持った不審者が現れたら、すぐに捕まるから不可能ということです。
しかし、一体なぜ、このような不気味な都市伝説が生まれたのでしょうか…
実は、「笑福亭鶴瓶と生首」には浅からぬ因縁があるのです。人気時代劇『必殺シリーズ』の劇場版である『必殺! III 裏か表か』(1986年)では、笑福亭鶴瓶は仕事人を演じていたが、鶴瓶が演じるこの仕事人は最後、雨の中で敵にめった切りにされ、首を落とされ晒し者にされる……という悲惨な最期を遂げてしまったのです。
この際に、映画のスタジオには精巧に作られた鶴瓶の生首のレプリカ(複製品)が作られました。
撮影後も、しばらくはスタジオに生首が残されているのを見かねた鶴瓶は、「不気味だから捨ててーや」とスタッフにお願いしたエピソードが残っています。この「ガバチョ生首事件」と「必殺」の時期が、ほぼ一致していることで、「鶴瓶の生首」という笑い話がさまざまな経緯を経て姿を変えて、現代に伝わっているのではないでしょうか?