深夜、北海道苫小牧市の路上で乗客から暴行を受けたタクシー運転手がその後、死亡するという痛ましい事件が起きてしまいました。亡くなったのは佐藤進さん(当時69)。男性の妻は悲しみに打ちひしがれ、勤務先のタクシー会社の上司は、乗客からの理不尽な仕打ちに怒りをあらわにしました。
事件から一夜明けた日、声を震わせながら「あの人は殴られるような悪いことをしたのでしょうか」と訴えたのは佐藤さんの妻・美智子さん(当時76)。彼女によると、佐藤さんは10年ほど前に、タクシー運転手として働き始め、「この仕事は楽しい。天職だ」と日々口癖のように美智子さんに話し、どんなに忙しくても嫌な顔一つせず、仕事に励んでいたといいます。
美智子さんによると、佐藤さんは、事件が起きる約3時間前の午後8時頃、いつもどおり食事を取るため自宅に戻り、「おいしいね」と美智子さんに語り、白米とみそ汁をおかわりしたといいます。そして9時頃に食事を終えると、「頑張るぞ。行ってきます」と言い、普段と変わらぬ様子で再び、仕事に戻ったと言います。
しかし次に美智子さんが佐藤さんを見ることになったのは、変わり果てた姿でした。苫小牧署から佐藤さんが暴行を受けたと連絡があったのは出勤してから約2時間後。美智子さんは、苫小牧市内の病院に駆けつけたが、すでに佐藤さんに意識はなく、「起きて」「頑張れ」と何度も佐藤さんに声をかけたが、数分後に息を引き取ったといいます。
年数回、夫婦で旅行するのが楽しみだったという2人は、今年も休暇を取り、佐藤さんが好きだった奈良に出かけ、「おすしを食べ、温泉に入ろう」と話していたといいます。美智子さんは佐藤さんについて「真面目で優しく、よく冗談を言って笑わせてくれた。あの人のいない人生をどうやって生きればいいのか。頭が混乱しておかしくなりそう」と突然の悲報に美智子さんは涙を流しながら話しました。
また、佐藤さんが勤務していた「金星室蘭ハイヤー」(室蘭市)苫小牧支店の高橋義広営業課長も、「自分の仕事には責任を持って取り組む人。同僚からも信頼されていた」と振り返り、「大切な社員を失い、残念でならない。こんなことで亡くなるなんてありえない」と乗客の理不尽な暴行による突然の死に憤りを隠せない様子でした。
逮捕されたのは渡辺正継容疑者(当時59)。事件現場近くに住み、2012年頃から苫小牧市内の北海道新聞販売店でアルバイトとして新聞配達を行っていたといいます。近くに住む女性は、「最近は見かけなかったが、こんな事件を起こすとは。残されたお父さんがかわいそう」と話していますが、彼がしたことが許されることは永遠にないでしょう。
突然奪われた命にネットからも「奥さんのコメントを見ただけで涙出てきそう…これからたくさんの楽しみをかかえてた最中、最愛の人をこんなかたちで亡くすとは被害者とは全くの他人だが、犯人が許せない」と憤りのコメントが多数寄せられました。
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