中国の抗日ドラマ、専門家が批判
中国での抗日ドラマはが物議を呼んでいる。
中国では抗日神劇といわれ、テレビドラマや映画などにしばしば登場する現実離れしたストーリーを指す。
中国では民間のテレビ番組の内容について中国共産党の検閲が行われている。
テレビ番組の内容が「反日」的であれば規制が緩くなるとされており、派手なアクションシーンなどを取り入れられるとして抗日ドラマを作る傾向にあるのだとか。
さらに高齢化も進んでおり高齢層に人気が高いのが抗日ドラマなのだ。
初期の抗日ドラマは典型的なものであったが、規制が緩いことをいいことに次第に過激化していった。
武術の達人が日本兵をなぎ倒したり、地上から投げた手榴弾で戦闘機を撃墜したりといった場面が増えた。
さらには素手で日本兵の体を両断したり内臓を掴み出すものや少女が全裸になって八路軍に敬礼するなどといった過剰なグロテスクやエロスを売り物にした作品が乱発されたのだ。
反日作品でありながら漫画BLEACHの主人公や貞子が登場したり、漫画ONE PIECEの要素が取り入れられたリと日本の文化を取り入れ影響を受けている作品も多い。
しかし、この抗日ドラマが過激化し、中国共産党内部の専門家からもこうしたドラマに批判の声が上がっているといのだ。
中国共産党直属の中央党史研究室の孫麗萍(スン・リーピン)研究員は、娯楽を名目にして歴史事実をねじ曲げることを大きく批判している。
孫研究員は’世界的に見ても歴史上最悪の悪行を働いたのが日本だ’とし’南京での虐殺行為をはじめ、多数の被害者が生まれたことに対して、われわれ中国人はこうも気軽に考えていいものか’と疑問を投げかけたのだ。
さらに「歴史を完全に無視した内容の神劇は中国人のアイデンティティーをも無視している」とも指摘したという。
そしてそうした多大な犠牲を無視して中国軍や日本軍をおもしろおかしく描くことは、犠牲になった中国の英雄を無視する行為であり、抗日戦争に協力してくれた国や人々の気持ちも無にするものだと批判した。
どこの国においても他国を批判する番組や内容というのは存在する。
歴史的に大きな過ちを犯してきた日本に対しては、抗日ドラマなどは非常に多いことだろう。
しかし孫研究員が指摘するように、歴史を無視した内容はいかがなものか。
あった事実をなかったことにすることも問題だが、現実離れしたありえない内容を歴史上のドラマなどに取り入れるというのもまた、問題となることだろう。