「週刊文春」が8月26日発売号を最後に電車の中づり広告を終了することが発表されました。首都圏を中心に通勤時の風景として定着した「週刊文春の中づり」はなぜ無くなることになったのでしょうか?
同誌の加藤晃彦編集長は「中づりは雑誌の象徴というべき『ブランド広告』でもあり、一つの文化だった」と話します。
地下鉄・東京メトロの広告会社・メトロアドエージェンシーの営業担当者によると、「雑誌の中づり広告は近年減っている」といいます。同誌の撤退によってさらに減少する可能性が見込まれます。
中づりは通勤時に興味を持った会社員らが駅の売店で雑誌を購入するという「すぐれたビジネスモデル」だったのですが、ネットが普及したいまの時代には合わなくなりつつあるとのことです。なんといっても中づりにはいまの時代にそぐわない短所があります。
誌面校了よりも1日早い
週刊文春の誌面の校了は火曜夜ですが、中づりは日曜にほぼ完成させ、月曜夜に校了する必要があります。そのため火曜の時点で、重大な事件が発生したり、スクープをつかんだりした場合、誌面に入れられても中づりには間に合わないのです。
一方、特報や速報を途中から割り込ませるために中づりで予告した記事を誌面から外せば、読者や書店からクレームを受ける恐れがあるといい、このような効率の悪さが問題視されていました。
コスト削減&電子版強化に注力
また今後は記事の完成から読者に届けるまでの時間を少しでも短くしようと、電子版に力を入れていくといいます。9月には電子版を宣伝するためのキャンペーンを展開する方針で、中づり広告終了で浮いた費用を電子版の宣伝費などに充てる予定です。
同誌は現在、中づり広告を東京メトロの丸ノ内線、日比谷線など5路線で計1700枚、大阪メトロで計約1500枚掲示しています。メトロアドエージェンシーによると、5路線で2~3日間掲示の正規料金は、なんと128万6千円。年間で数千万円以上のコスト削減効果ができるでしょう。
ネット上では、「スマホに夢中で中づりなんか見てないもんね」「たまに電車に乗ると、中吊り読むの楽しみなんだがな」「昭和がどんどん遠くなっていきますね」などの声があがっています。
現在はオンラインニュースサイトが数多くありますが、その中で「週刊文春」の選択は上手くいくのでしょうか。