27日、東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は2848人と、今年1月の過去最多を328人上回りました。今回の“第5波”はインド由来の感染力が強いデルタ株が原因なのですが、政府はワクチン接種以外の新たな対策は出さず、東京五輪開催中の首都圏の病床逼迫(ひっぱく)という“最悪のシナリオ”がにわかに現実味を帯び始めました。
この日夕方、菅義偉首相は田村憲久厚生労働相や西村康稔経済再生担当相ら関係閣僚を官邸に呼び、急遽、会議を行いました。終了後、記者団の取材に対し、「デルタ株の割合も急速に増加しており、4連休の人出も含めて分析していくことにした」と警戒感していることを強調しましたが、新たな対策はなく、国民へのメッセージも期待するほどのものではありませんでした。
専門家が警告していた「五輪期間中に3千人もあり得る」の予測が目前になっているにもかかわらず、政府・与党内は「4連休中の検査結果が上乗せされ、実態以上の数字になっただけ」「無料のPCR検査を受けた人が膨れ上がった結果だ」と必死に平静を装いました。菅首相も「感染者が2万人台の英国に比べたら、日本はましだ」と懲りずに強気な姿勢を見せてはいますが、五輪をなんとしてもせいこうさせるため、国内の動揺を抑えたい思惑が見受けられます。
感染症の専門家は「ワクチンの一定の進展など防疫のプラス条件を簡単に覆してしまうほどの急拡大に危機感を隠せない。」と話しました。東京都の重症者用の病床使用率は増加し、6割に迫っています。6月21日からまん延防止等重点措置を適用し、今月12日には先手を打って緊急事態宣言に切り替えていたはずの東京をさいなんでいるのは、デルタ株の存在です。“第5波”の勢いは過去のものとは様子が全く違うそうで、専門家は「12~18日の新規感染者に占めるデルタ株の割合は33・7%で、既に6割に達した」と解析しました。
27日、首相は「重症化リスクを7割減らすとされる新たな治療薬について、これから徹底して使用していく」と話しましたが、現実には厳しいと言えます。酒類の提供停止要請による不手際で政治の信用も傷つき、取り戻すのもままならない状況です。
五輪を自宅でテレビ観戦する人々が増えているおかげなのか、都内の駅や繁華街の人出はやや減少しているようにも見えますが、夏休みシーズンもいよいよ本格化する中で、人の流れを抑制できるかは予断を許さない状況です。
8月初旬に“第5波”のピークが来ると予測していた専門家の間では「東京から感染が染み出していく地方も含め、もう一段強い措置を早めに打たないと手遅れになる」と話されています。