米国の研究チームは、大気汚染のひどい地域に住む妊婦の子供は、自閉症のリスクが2倍に高まるという調査結果を発表しました。
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そもそも自閉症とは、他人とのコミュニケーションや社会的行動に困難を生じる発達障害の一種です。遺伝的な素因によって生まれつき脳の機能に問題が起こるためといわれていますが、正直、未だはっきりした原因はわかっていません。ご存知の方も多いかとは思いますが、大気汚染物質には多数の毒性物質が含まれています。なかでもディーゼル排気ガス、鉛、マンガン、水銀、塩化メチレンなどの大気汚染物質は子宮内の胎児にまで及び脳神経系の発達に影響を与えると考えられています。以前までは、これら大気汚染物質の濃度が高い地域に住む妊婦の子供は自閉症(正確には自閉症スペクトラムというもう少し広範囲の病態)のリスクが高まることを示唆していましたが、そのとき使われたデータは、米国内のわずか3地域のものに留まっていました。
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そこで今回の研究では、米国全体における大気汚染と自閉症の関連性を明らかにするため、実験が行われました。研究チームは、看護師健康研究IIの参加者から、325名の自閉症児と22,101名の非自閉症児の出生地と誕生日時に関する情報を抽出し、米国環境保護局がまとめている米国内の各地域の大気汚染物質濃度の時系列データと照らし合わせて、子供が生まれたときの大気汚染濃度と自閉症リスクの関係を解析することにしました。その結果、ディーゼル排気ガス、鉛、マンガン、水銀、塩化メチレン、およびすべての金属の各々について、汚染レベルの最も高い地域で生まれた子供は、最も低い地域で生まれた子供に比べて、自閉症を発症するリスクが1.
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0倍も高まることがわかったといいます。しかも、特に高かったのはディーゼル排気ガスと水銀でリスクは2. 0倍でした。最も低かったのは、すべての金属の総量による影響で、リスクは1. 5倍だったこともわかっています。
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また、汚染の度合いが高まるにつれてリスクも徐々に高まっていく濃度依存的な関係にあることもあきらかになりました。つまり、妊婦は空気が少しでも綺麗なところで住むことが適しているといえるでしょう。本来、自閉症は世界的にも男児に多いことが知られていますが、ほとんどの汚染物質の影響も、女児に比べて男児に顕著な影響を与えることがわかったといいます。しかし、今回の調査では自閉症の女児の数が少な過ぎてはっきりしたことがいえなかったため、研究チームでは更なる検討が必要だと述べました。今後の調査でさらに詳しいことが明らかになればいいですね。
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