ホホジロザメとは、サメの一種で、「サメ」と言ったらよく思い浮かべる映画「JAWS」の主人公でもあります。側頭部、つまり人では頬に当たる部位が白色であることから、「ホホジロザメ」と名付けられたそうです。肉食性のサメの中ではその体つきがほぼ一番大きく、力強く獲物を噛み締められる顎と牙を持っています。サメとしては一番人々によく知られた種の動物ですが、意外なことにもその認知度に比べてあまり深い研究はなされていません。全世界を活発に動き回るといった習性を持ち、攻撃性があって危険な上に、絶えない人による無分別な捕獲による個体数の減少がその原因となっています。これらの要素は、水族館や動物園などにおける限られた空間でのホホジロザメの飼育が極めて難しい理由でもあります。
現時点ではホホジロザメを展示用で飼育している水族館や動物園は存在しませんが、以前は数々の施設でホホジロザメを飼育していました。しかし前述したように、捕獲と飼育がとても困難なことから、大抵の施設は数日から数週間でホホジロザメを海洋に帰すか、あるいはその前にサメが斃死してしまったそうです。一方、衝撃的ですが、逆に動物園側によって残酷にその命を奪われたホホジロザメもいます。
2019年2月、英国の「デイリーメール」は、オーストラリアのヴィクトリア州にある、閉鎖後そのまま放置された動物園でホホジロザメの死骸が発見されたと伝えました。発見者は、オーストラリアのある夫婦でした。
旅行中だった夫婦は、観光目的で捨てられた動物園に訪れ、内部を見回していたところ、水槽に閉じ込められているホホジロザメを発見したそうです。彼らはその様子を映像で撮影し、YouTubeに公開しました。
公開された映像には、大きさおよそ5mのホホジロザメの死骸が水槽の中に浮いてる様子が映っています。
あまりにもその形がよく維持されているので、大きな標本に勘違いできるほどですが、ホホジロザメは水槽に撒かれた毒物(ホルムアルデヒド)の影響で死亡した状態だったようです。しかし、生きたサメがいる水槽に毒物を入れて死なせるなんて、一体どこの誰がこんなに酷いことをしたのでしょうか。
驚くべきことに、犯人は動物園側で働いていた人物でした。
2012年、経済的危機を乗り越えられなかった当動物園は閉館を命令され、営業中止に至ります。他の動物は自然に帰したり、他の施設に移すなどして動物園から出すことができたようですが、このホホジロザメだけは処理のしようがなかったそうです。そこで動物園側が下した決断がなんと、水槽にホルムアルデヒドを一杯注ぎ入れてサメを殺してしまうということでした。
ホホジロザメが死んだことを確認した責任者らは、死体をその場に放置したまま動物園を閉鎖しました。
それから報道時点の2019年まで7年の間、まるで剥製のように、ホホジロザメの死骸はそのまま水槽の中に残っていたのです。殺害(?)に使われたホルムアルデヒドは、死体を保存する際によく使われる化学物質でもあります。そのため、サメの死骸は7年間も腐敗せずほぼ完璧な状態で保存されていたのだと思われます。
一方、この動画が公開された後、サメを見るためにこの動物園を訪れる観光客が増えているそうです。
これに対してオーストラリアの警察は、当動物園は厳然な私有地であるため、むやみに入っていくと処罰の対象になりうると警告しました。
オーストラリアの夫婦がこの捨てられた動物園を探検する様子は、この下の動画から確認することができます。