ナカダ被告公判
2015年に熊谷市で起きた小学生2人を含む6人が殺害された殺人事件。
9日、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)の裁判員裁判第9回公判がさいたま地裁(佐々木直人裁判長)で開かれました。
この日、ナカダ被告は上下黒のスエット姿で、終始うつむいていました。
ナカダ被告の発言の一部です。
弁護人「人を殺したことを覚えていないのか」
ナカダ被告「覚えておりません。分かりますか」
弁護人「話を続けてください」
ナカダ被告「おもしろかった」とささやくように繰り返したといいます。
さらに、証人尋問でナカダ被告の姉が来た際にはこのように発言しました。
ナカダ被告「何が起きたのか思い出した。今分かった。人の肉を食べさせられた。私は豚肉だと思って食べていたけれど、あれは人間の肉だった。今になってわかりました」
これに対し弁護人が真意を訪ねます。
ナカダ被告「猫が私に言った」
さらに公判の途中では、
ナカダ被告「耳鳴りがする」
弁護人「どうして耳鳴りがするか教えてください」
ナカダ被告「だって全部夢でしたから。そして天使が落ちてきた」
ナカダ被告「白い空が見ることができた」
などといった意味不明な発言を繰り返しました。
一方で、それぞれの起訴内容についての質問には、いずれも沈黙しました。
公判の争点は、責任能力の有無や程度となっています。
また弁護側は、心神喪失を理由に無罪を主張する方針を示しています。
熊谷6人殺害事件
2人殺害した第一事件
2015年9月14日、熊谷市の住宅である夫婦が殺害されます。
18時頃に夫婦の知人女性が、住宅を訪ねた際に2人が死亡しているのを発見しました。
この日の17時に知人女性が殺害された妻に連絡をしており、その際には返信が来ていました。
通報を受けた警察が駆け付けると、殺害現場には血でアルファベットのような文字が書かれていたといいます。
さらに2人の遺体の一部には布が欠けられていました。
1人殺害した第二事件
2015年9月15日午後5時頃、熊谷市の住宅で84歳の女性が殺害されます。
16時23分頃に警察に通報があり、16時50分頃に警察が駆け付けています。
浴槽で殺害されており、遺体には毛布が欠けられ、浴槽の蓋は閉まっていました。
さらに畳の血痕の上にはマットが欠けられており、犯人が犯行を隠そうとしたと、警察は判断します。
3人殺害した第三事件
第二事件が発生した直後の17時30分頃に、第二事件の現場から80mほど離れた住宅で3人の家族が殺害されているのが見つかりました。
殺害されたのは小学生の娘2人と、その母親の女性1人です。
第二次事件の聞き込みのために警察が住宅を訪問しますが、電気がついているにも関わらず応答がありませんでした。
これを不審に思った警察が周囲を観察していると、この家の2階から包丁を持った犯人が顔をのぞかせます。
犯人の男は警察の説得を無視し、2階から飛び降り自殺を図りました。
そのまま警察に確保され病院に運ばれました。
残酷な殺害
ナカダ被告は自殺を図った後、意識不明となっていましたが、9月24日に意識が戻りました。
警察の取り調べに対し、すべての犯行を否定していました。
被害者6人はすべて包丁で殺害されていました。
大人4人は複数の切り傷を負っており、小学生2人は包丁でひと突きでした。
小学生2人をひと突きにしていることから、警察では犯人には強い殺意があったとして捜査しました。
さらに犯人がすべての遺体を隠そうとした痕跡も残っていました。
最初の大人3人には布がかけられており、第三事件では母親がクローゼットに隠されていました。
さらに犯人は、返り血を浴びたため、被害者宅にあった服に着替えていました。
さらに驚くべきことは、第一事件、第二事件の家で、犯人は食事を共にしていました。
第一事件と第二事件の住宅にあった食べ物に残された唾液からは、犯人のDNAが検出されました。
さらに第二事件の現場では、照明やエアコンのスイッチが入ったままになっており、犯人がこの家で一夜を明かしたことも分かっています。
ナカダ被告の兄は大量殺人犯
取り調べを進めると、ナカダ被告の兄の1人も殺人犯であることが発覚しました。
ペルー史上最悪といわれる連続殺人事件を起こした、パブロ・ナカダ受刑囚です。
2007年に銃で17人を殺害し逮捕されます。
しかし、実際には2000年から2006年にわたり25人も殺害していたことを自白したのでした。
パブロ・ナカダ受刑囚には精神疾患があることが分かっています。
ナカダ被告の精神疾患
取り調べに対し、ナカダ被告も意味不明な発言や奇行をを繰り返していました。
そこで精神鑑定を実施したところ、精神疾患であると判断されました。
犯行当時は統合失調症を発症し、統合失調症による妄想で、犯行に及んだといわれています。
このとこから、ナカダ被告の公判の争点が、責任能力の有無や程度となっているのです。