ドラえもんの最終話というと、複数の説が都市伝説のようにまことしやかに語られています。よく知られているものでは、ドラえもんを作ったのは大きくなって科学者になったのび太だったとか、事故に遭って植物状態となったのび太が見ている夢だという説まであります。しかしこれらの話はドラえもんの作者である藤子・F・不二雄が描いたものではありません。いったいどの話が本当なのでしょうか。そもそも、最終話はあるのでしょうか。
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◼︎最終話はよく知られているあの話
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ドラえもんのマンガそのものは、連載中の平成8年に作者である藤子・F・不二雄が亡くなってしまったため、コミックス45巻まで最終話は描かれていないと考えられていますが、実は1度最終話が描かれているのです。それが、コミックス6巻の「さようなら、ドラえもん」です。映画化もされているため観たことがある人は多いと思います。あまり詳しくない人でも知っているくらい有名な話ですが、実はこれはその当時最終話として描かれています。未来の世界に帰らなければならなくなったドラえもんが自分のことを心配するのを見て、のび太はドラえもんを安心させようとジャイアンに喧嘩を挑んで勝ってみせるのです。安心したドラえもんはのび太が寝ている間に未来の世界に帰っていきます。
この話は当時連載していた少年誌に掲載されていますが、実はこれは編集者から打ち切りを言い渡されて書いた最終話だったのです。
ではなぜこれで終わらなかったのか。それは、全国の子どもたちから「終わらせないでほしい」という声が殺到したからです。その要望が通り無事連載を続けられることになり、次に描いたのがコミックス7巻「帰ってきたドラえもん」です。話したことがすべて嘘になるという薬を飲んだのび太が「ドラえもんは帰ってこない」と言ったことで帰ってくるのです。
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◼︎真の最終回は2回あった
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あまり知られていない話ですが、藤子・F・不二雄はもう一度最終話を描いています。そのときも連載していた少年誌の編集者に打ち切りを言い渡されてのことでした。内容は1度目と同じ、未来に帰ることになったのでのび太のそばにはいられないというものでした。ただし、未来の世界に帰らなければならなくなった理由としてこのとき描かれているのは「時間犯罪者による犯罪が増えたので、すべての時間旅行が禁止になった」というものです。
大長編にしばしば登場するので知っている人も多いと思いますが、時間犯罪者とは過去に行って悪さをする人のことです。原始時代に行って原始人を奴隷のように扱いながら基地を作るとか、白亜紀に行って恐竜刈りをするといった描写が大長編では描かれており、その都度タイムパトロールと呼ばれる警察部隊が捕まえにやってきます。その時間犯罪者たちのせいで、ありとあらゆる時間旅行を禁止とする法律が制定されることとなり、それはもちろん過去の世界にいるドラえもんにも適用されるので未来の世界に戻らなければならないという訳です。
その最終話が描かれた際にも、読者である子どもたちから辞めないでほしいという声が上がり、続けることが決定されました。この話があまり知られていないのは、コミックスに未収録だからです。
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◼︎まとめ
ドラえもんの最終話は、都市伝説としてまことしやかにいくつも語られていましたが、実は作者である藤子・F・不二雄が2度もきちんと描いていたのです。2度とも編集者から打ち切りを言い渡されたことが原因で、内容も理由は違えどドラえもんが未来の世界に帰らなければならなくなるというものでした。2度の打ち切りから這い上がり、作者が亡くなるまで連載が続いたのは、読者である子どもたちからの熱烈な要望があったからです。