新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は 世界中で感染者や死亡者が報告されており、中東諸国でも深刻な問題となっています。イランでも昨年3月から感染者が増加し、12月には13,000人を超えました。
そのような中、飲酒が 法的に禁じられているイランで、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬になる」といううわさを信じて密造酒を飲んだ 27人が死亡したと報じられています。
メタノール中毒による死者も デマ被害の1つ
国営イラン通信(IRNA)によると、密造酒を飲みメタノール中毒になったことによる死者は、イラン南西部のフージスターンで20人、イラン北部のアルボルズで7人報告されているとのこと。イランのジュンディーシャープール医科大学の広報は、新型コロナウイルス感染症を治療すると信じて密造酒を飲み、病院に運ばれてきた人が 218人いることも発表しています。新型コロナウイルスの流行に関してはデマも大きな問題となっていると指摘されており、イランでの死者もそんなデマ被害の1つといえます。
イランでは1979年に起こったイラン革命の後から、飲酒が禁止され、飲酒を行うと罰金・むち打ち・禁錮刑などの厳刑が科されます。しかし実際には、密輸や密造によってお酒が売買されており、メタノール中毒による死者も少なくありません。このため2019年には政治家や活動家が死者を減らすためにも 飲酒の禁止を緩和するよう政府に求めました。
大量のメタノールを摂取すると、視覚障害や腎不全が起こり、最悪の場合は死にいたります。このため地元メディアは 市民に対し、密造酒が中毒死をもたらすことを定期的に呼びかけています。
なお、2020年2月末にはイランで聖職者がコロナウイルス対策として「寝る前、お尻の穴にエッセンシャルオイルを塗ること」を提案し、大きな批判を呼びました。
日本人の半分は お酒が飲めないか、弱いDNA⁉
ちなみに お酒に含まれるアルコールはエタノールなのですが、エタノールは、肝臓でアルコール脱水素酵素によって分解され、アセトアルデヒドになります。そして、アセトアルデヒドは、肝臓でアルデヒド脱水素酵素によって分解され、酢酸になります。酢酸は無毒ではあるものの、アセトアルデヒドはヒトにとって猛毒です。
アセトアルデヒドの血中濃度が高いと、頭痛がして気持ちが悪くなったり、二日酔いの原因になります。つまり、アセトアルデヒドを分解しづらい人がお酒に弱い人ということになりますが…
実は、日本人は世界でも珍しいほどお酒に弱いと言われます。ちなみに、日本人に限らず、東アジア人全体でお酒に弱い遺伝的タイプの頻度が多い特徴があるそうです。
「ALDH2」の働きが もともと弱いか、まったく持っていない人も⁉
アルコールは、肝臓で「アルコール脱水素酵素(ADH)」と「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」によって分解されて無害化されます。そこで、その「アセトアルデヒド脱水素酵素(ADH)」には、血中のアセトアルデヒド濃度が高いときに働く「ALDH1」と、アセトアルデヒド濃度が低いときに働く「ALDH2」がありますが…
この「ALDH2」の働きが、もともと弱いか、まったく持っていない人もいるためお酒に強いとか弱いということになるんだそうです。そして、日本人の半数近くがお酒に弱いか、まったく飲めない体質になるそうです。
もちろん日本では 飲酒が禁酒されているわけではないですが、飲酒による不祥事なども多いこと、そしてコロナに対するデマ報道にも扇動されてしまう現状を見ると、気を引き締めて予防に努めていく必要があるように思われます。