去る 1月30日、時事通信の記事「安倍首相、帰国邦人の検査拒否『残念』新型肺炎、政府が対策本部」がトピックスに掲載されましたが…
安倍首相は、この日の午前中に行われた参院予算委員会で 2人がウイルスの検査を拒否したことに触れ、「大変残念だ」と発言。ニュースは更に拡散し、当然ながら SNSは異論で満ち溢れました。
信じられない!「これではバイオテロ」の声も
「SNSなどでは基本的に『信じられない』、『これではバイオテロ』という声が多く、『チャーター機の費用は2人に負担させるべき』、『武漢に送り返せ』といった過激な意見もありました。
『氏名を公表しろ』という書き込みも少なくなく、政府が2人の個人情報を一切、開示しなかったことも影響したのかもしれません。結果、ネット上では揣摩憶測が乱れ飛ぶ事態となりました」 と取材した記者が振り返ります。
ネット上ではよく見られる現象だが、“大喜利”的なウケ狙いの投稿も行われたようです。それらをまとめたサイトがいくつかあり、閲覧してみると、「宗教上の理由」、「偽装パスポートの発覚を恐れた」、「絶対に出社しなければならないブラック企業の社員」などといった書き込みが紹介されていました。
更に 目についたのが「本当に日本人なのか?」という疑問。中には「日本に帰化した外国人ではないのか」という根も葉もない書き込みも散見されました。
いずれにせよ、共通するのは「理解できない」という感覚でした。医療関係者も「ウイルス検査は、被験者に負担を強いるようなものでは全くありません」と語りました。
説得する職員を動画で撮影?
「ウイルス検査とは、要するにDNA検査です。検査に必要な“検体”を採取する方法として、厚生労働省は『喉の奥を綿棒で拭き取る』ことを推奨しています。さらに代替の選択肢として血液、痰、尿などを列挙していますが、喉の奥を綿棒で拭う方法が 最も正確な検査が可能です。チャーター便で帰国された方々も、相当数が綿棒で採取されたと思います。激しい苦痛を与えるようなことはなく、インフルエンザの検査で 鼻腔を棒で拭うくらいの痛みしかありません」(同・医療関係者)
テレビ朝日などは2人が拒否する理由として「自分には症状がない」、「日本に帰国したのだから家に帰りたい」と訴えたと 報道しました。
さらに日本テレビなども、職員が「ご自身のためにも検査を受けるべき」などと説得しようとすると、怒りだして 動画を撮影し始めた、などと放送しました。
当然ながらSNSでは 怒りの投稿であふれたわけだが、「家に帰りたい」のが本音だったのではないかと見る向きもあるようです。何が何でも帰宅するため、検査を拒否したという推測です。
自宅に帰るための 2つの条件とは?
「NHKの報道によれば、ウイルス検査の結果が出るまでの措置として、自宅に帰るための条件として2つが提示されたそうです。いずれも帰宅後は外出を控えることを前提とし、1つ目は『東京や、その近郊に住む人は、政府がバスで自宅近くの駅まで送迎する』、2つ目は『家族や勤務先の関係者が運転する車で迎えにきた場合は、どこにも立ち寄らず自宅まで送迎する』です。この2つが無理だという場合は、千葉県勝浦市のホテルに移動し、待機することになりました」(前出・取材記者)
ただし、前出の朝日新聞によると、チャーター機の乗客206人から入院者や検査拒否者などを除き、ホテルに泊まった者は 191人に達したという。要するに大多数は自宅に帰らなかった、もしくは帰れなかったようです。
「ひょっとすると検査を拒否した2人は、どうしても自宅に帰りたかったのかもしれません。しかし都内にも、その近郊にも自宅がなく、家族や勤務先の関係者などが車で迎えに来てくれることもなかった。そのため、検査を拒否して自宅に帰るという強硬手段に出たという可能性はあると思います」(同)
指定伝染病となれば、強制力を伴った検査が可能
ところが 1月30日、厚労省は「検査を拒否した2人が、『検査を受けたい』と」申し出てきた」ことを明らかにしました。
世論も振り回されてしまった格好だが、このような混乱を再発させないためにも法整備が必要、という声も。だが、ある政府関係者は「その必要はない」と否定します。
「『たとえコロナウイルスが指定伝染病とされても、発症していない人には手の打ちようがない』という報道もあるようですが、これは事実とは異なります。政府は2月7日としていた指定感染病とする政令を、2月1日に前倒しました。指定伝染病となれば、たとえチャーター便の乗客が検査を拒否しても、ある種の強制力を伴った検査が可能になる。なので、それ以上の法整備は必要ありません 」
ならば、もっと早くに指定伝染病としておけばよかったのではないか?という疑問も出そうですが…
しかし厚労省は「ウイルスの拡大や感染状況を注視した結果、適切なタイミングで指定伝染病とした」と判断しているということでした。