年末年始の場合、お餅がノドに詰まるなど救急車の稼働状況は普段の10倍程度になるそうです。しかし、そのような最中…
「緊急自動車の運転が難しくなり困っています。特に横断歩道を渡っている歩行者はなかなか協力していただけません…」とベテラン消防署員が話ます。
説明するまでもなく赤色回転灯とサイレンを鳴らして走る緊急車両は、急病や火災など秒単位で状況が悪くなる事態のため目的地に急いでいます。脳や心臓の急な疾病、出血量の多いケガなども、救急搬送の遅れは致命的になるからです。
基本は左側によって避ける
サイレンを鳴らし救急車両が近づいてきた場合、一般車両は道路の左側に寄るのが大原則。ただし道路交通法では、左によって進路を譲ることは明記してあるが、徐行や一時停止は 義務付けてはいないのです。
海外では停止をさせる場合も多いが、日本では 左によって停車しないクルマを見つけて「違反だ」と糾弾するのは お門違いとも言えます。要は救急車両の進路を妨げないことが重要なのです。
対処の仕方がわからない運転手も…
ところが 中央分離帯のある道路であっても、信号待ち中に緊急車両が接近してきた際、赤信号だと全く動こうとしない先頭車両も。
2mでもハンドルを切りながら前に進んでやれば、緊急車両は通れます。実際、緊急車両が接近しているにもかかわらず道を譲ろうとしなかった車両のドライバーは、「どう対処していいのか解らなかった」と言う場合が多いようです。
路肩のない東京の首都高など、平日は走り慣れている人が多いものの休日や正月休みなど、運転経験が少ないいわゆるサンデードライバーが多い時は、緊急車両が目的地に到着するのに普段の何倍もの時間が掛かるといいます。
アメリカでは「脇に寄せて完全停止」マイクは日本だけ?
アメリカでもヨーロッパでも緊急車両が来たら最優先で道を譲るし、緊急車両も日本とは桁違いの速さで目的地に向かいます。
ちなみにアメリカでは「脇に寄せて完全停止」というのがルール。また、日本と違う点として、対向車線の車も停止しないといけないこともあげられます。
日本は緊急車両でも最高速度は時速80キロ(高速道路の対面通行外は時速100キロ走行)ですが、海外ではそれ以上のスピードで走行しまするため、より迅速だともいえるのですが…
日本の場合の問題は、横断歩道の歩行者です。緊急車両が接近してきても、止まらない人が多いというのです。
緊急車両も歩行者と接触したら社会問題になるため、やむをえず最徐行しマイクで歩行者に「道を譲ってください!」とお願いしなければならない状況です。ちなみに緊急車両がマイクを利用するのも日本にだけ見られる特徴だそうです。
他の先進国なら歩行者もすぐに道を譲り、新興国であれば歩行者が居ても緊急車両は凄い勢いで走っていくことも。緊急車両が「譲ってください、お願いします!」を連呼しながら徐行しなければならないのは、悲しいことに日本だけかもしれません。
交差点を避け一方通行では右側も可、妨害ペナルティも
人もそうですが、車も交差点付近で緊急自動車が近づいてきた場合は、交差点の手前で停車するか、左折、もしくは直進して、交差点を出たあと一時停止する義務があるのです。
交差点内で道を譲るのは原則として禁止ですが、赤信号で 緊急車両の進路を塞いでしまう場合は、クルマを動かし進路を譲ることを優先させなければならないのです。
また、一方通行の道でも左側によって進路を譲るのが原則ですが、もし、左側に寄ることがかえって緊急自動車の進行の妨げになるような状況なら右側に寄ることも可能。
つまり、一方通行の道に限っては、左右の避けやすい方にクルマを寄せるのが正解ということです。また、複数の車線がある広い道路で緊急車両が車線中央を通過することがありますが、このようなときも臨機応変に緊急車両の進行を妨げないような行動が望まれます。
これらに反して、緊急自動車に道を譲らなかったり進路を妨害した場合は、緊急車等妨害違反もしくは本線車道緊急車妨害違反で、いずれも違反点数1点、反則金6000円(普通車)のペナルティとなってしまいます。
歩行者や 自転車も緊急自動車の進路を妨げないマナーを
忘れてほしくないのは、歩行者や 自転車であっても救急自動車を優先する必要があるということです。ときどき救急自動車が近づいてきているにもかかわらず、普通に(早足で?)横断歩道や交差点を渡っている歩行者や自転車を よく見かけることもありますが、とてもマナーが欠けているようにみられます。
とくに自転車は法律上は「軽車両」なので、クルマと同じように緊急自動車には進路を譲る義務があります。
歩行者もとくに罰則はないにせよ、緊急自動車に対しては「歩行者優先」の考えは捨てて、緊急自動車の進路を妨げないというのが、大人としての常識であるし、子供にもよく教えるべきでしょう。
もしかしたら 私たちも 緊急搬送されることになるかもしれないということを忘れずに 快く譲りたいものです。