ご飯やパンなどの糖質を摂らない分、肉などのたんぱく質は制限なく食べられる「炭水化物抜きダイエット」の流行とともに、ランチでも気軽に「赤身肉」を食べられるステーキチェーン店の店舗が急激に増得ているように感じられます。
(赤身肉とは、牛や豚、羊などの肉を指し、鶏肉は含まれません)
しかし 近年、そんな赤身肉が、がんリスクを増加させるという複数の研究結果が報告されているようです。
米ハーバード大学公衆衛生大学院によると、1日に赤身肉を85g以上食べる人は、ほとんど食べない人に比べてがんによる死亡リスクが10%高かったのです。
また、赤身肉を1日あたり50g食べる人は、21gしか食べない人に比べ、大腸がんリスクが19%上昇するという英オックスフォード大学の研究者の調査結果も出ています。
では、赤身肉はなぜダメなのでしょうか?
「赤身肉を食べると、腸の中の悪玉菌が『ニトロソアミン』という強い発がん性物質を作り出します。これによって大腸がんのリスクが高まるのです」 秋津医院院長の秋津壽男さんは そのように解説します。
米ハーバード大学がん予防センターによると、発がん要因のトップは「喫煙」と「食事」でそれぞれ30%を占め、「運動不足」と「職業(不規則な生活やストレスも含む)」はそれぞれ5%で、日々の生活習慣が大きな要因だそうです。
その一方で「遺伝」は5%に過ぎないそうです。
そうだとすれば、食べ物や生活習慣に気をつければ、がんリスクを低減できるということでしょう。
また 調理法によってもがんリスクが高まるそうです。
「米ノースカロライナ大学の研究チームが約18年かけて行った追跡調査によると、乳がんと診断される前に焼肉やバーベキューなどを多く食べていた人は、少ない人に比べてがんを含む総死亡リスクが23%高かったという結果があります。
バーベキューのように肉を直火で高熱調理すると、発がん性物質である『多環芳香族炭化水素(PAHs)』などが発生します。PAHsは肉を焼いた時の煙にも多く含まれ、それがついた肉を食べることの影響も指摘されています」
米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが話しました。
どうしてもバーベキューをしたい場合は、黒ビールで肉をマリネしてから焼くと、PAHsの発生を減らせるという研究結果もあるそうです。肉を食べる量を調整して その分、魚介類や 野菜を摂取するなど 食事方法も 意識する必要もありそうです。
米国の南カリフォルニア大学の調査によると、肉や魚、牛乳や卵などを主とする高たんぱく質の食事をする人(たんぱく質からのカロリー摂取が20%以上)のがんによる死亡リスクは、低たんぱく質食の人(同10%未満)の4倍にも達していました。
つまり 死亡リスクが高まるのは動物性たんぱく質だけで、植物性たんぱく質では見られないということです。
「赤身肉や牛乳などの動物性たんぱく質を摂りすぎると、細胞の成長や分裂を促し細胞死を抑制する成長ホルモン『インスリン様成長因子1(IGF-1)』の血中濃度が上昇します。このIGF-1が過剰になると、異常な細胞増殖を引き起こし、がん化につながるとされています」(前出 大西さん)
日本人の死因ナンバー1の「がん」。60代頃から、男女ともに急激にがん罹患率が上昇すると言われているだけに、普段の食生活や生活習慣の見直しから始める必要がありそうですね。