近年、「社会を支えてきた営業マンたちが、近いうちに職を失うことになるだろう」と予測されています。もし、あなたが営業一本で生活してきた社員で、突然明日から営業をしなくて良いと言われたら……あなたならどうしますか?
コンピューターの技術革新がすさまじい勢いで進む中で、これまで人間にしかできないと思われていた仕事がロボットなどの機械に代わられようとしています。
たとえば、『Google Car』に代表されるような無人で走る自動運転車は、これから世界中に行き渡ります。そうなれば、タクシーやトラックの運転手は仕事を失うのです。
これはほんの一例で、機械が代行できる人間の仕事は非常に多岐にわたります。英オックスフォード大学でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授は、人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる—そんな衝撃的な予測まで発表しています。
「これからの時代、営業はいらない」「営業という仕事は無くなる」
実際、既にAmazonによってBtoC(Business to Consumer)にもたらされた大変革は、BtoB(Business to Business)の現場でも起き始めており、また、医療業界では、営業の代名詞と言えるMR(医療薬事情報担当者)を代替するサービスがすでに浸透しています。そして、フィンテックが銀行業界を脅かしているように、セールステックの存在感がますます大きくなっています。
これらの事実から導き出されるのが、これからの時代、ビジネスの世界で「営業はいらなくなる」という結論だと、専門家達は見込んでいます。
いま私たちは、スマーホンを通じて、ネットにある膨大な商品カタログにアクセスでき、自分の「ほしい」を満たすモノに出会えます。それは、どこに住んでいようが関係ありません。スマートホンさえあれば、クリックひとつでほしいモノが手に入るわけです。店まで足を運ぶ必要性は乏しい、そのために店が潰れます。
テクノロジーが人の果たしていた営業的機能を代替するという事態は、医療業界の変化からも見て取れるといいます。製薬会社のMR(医療薬事情報担当者)がどんどん減っているのです。
MR認定センターのまとめによると、MRの数は2013年度の6万5752人をピークに、5年連続で減少し、2018年度末で5万9900人。とくに、2018年度の減少は過去最高で、全体の4.1%にあたる2533人だったといいます。新卒採用の抑制も続いていて、19年春では、製薬会社の6割はMRに新卒を採用していません。
MRの減少傾向について、MR認定センターは、デジタルチャンネルを通じた情報提供が広がっていることを理由のひとつに挙げています。
MRと言えば、営業マンの代表格とも言える存在です。いつも病院のどこかに潜んでいて、医師に接触するタイミングを見計らっているのです。チャンスと見るや医師に近づいて、自分の会社の医薬品を売り込む。夜は高級クラブで医師を接待し、医師の家族の誕生日には高級品を贈るのです。今までは、「これぞ営業マン」というのがMRのイメージだったのが、もう過去のものになりつつあるのです。
製薬会社はこれまで、自社の医薬品についての情報を、MRを通じて医師に届けていました。MRはその医師の専門性や性格、所属病院などの個別条件を理解しながら、接待攻勢も含めて営業活動を行い、薬の発注につなげていたのですが、その営業活動があまりに過剰になったことが問題視され、業界でルールを作って自主規制が進み、MRの活動範囲は狭められていきました。そこに、インターネットを利用したサービスの提供が始まり、結果、MRの仕事はどんどん浸食され、MRの数は減り続けているのです。このようにBtoBにおける営業においても、テクノロジーによる代替が進んでいるといいます。
いまだに多くの企業が、新規顧客獲得のために「飛び込み営業」と「テレアポ」に頼っています。そのテレアポの成功率は1%以下という、非常に効率の悪い営業です。
また、飛び込み営業やテレアポは、その精神的な負担が大きく、大抵の人は長期間続けることができません。なかには心が病んでしまう人もいるほどです。
また、営業というのは、される方は79%が、する方も74%が「無駄がある」と感じている、というデータまであります。つまり、営業に関わる7割以上の人が「自分の仕事には無駄がある」と思っているということです。
つまり営業という業務は、それをする方もされる方も、ほとんどが無駄な時間になり、精神的にキツいのです。
そのような”営業”を、今後は今後はITが担っていこうとしています。
ショルダーバッグ型の携帯電話が誕生してからスマートフォンができるまで、あっという間でした。技術の進化は目まぐるしいほど早く、営業という職種も数十年、いや、数年で無くなってしまうかもしれません。
営業に携わっている人、これから営業職に携わろうとしている人は、今一度自分の生きる道についてしっかりと考えた方が良いかもしれません。