11月8日、愛知県稲沢市の元市議会議員の桜木琢磨氏(76)が、2013年に中国に覚醒剤を運んだとして罪に問われていましたが、その判決公判が広州市中級人民法院(地裁)で開かれました。
今から5年前の2013年、広東省広州市の空港で桜木琢磨被告のスーツケースから3キロを超える覚せい剤が見つかり、麻薬運搬罪で起訴されていました。すると、翌年の14年8月には、“懲役15年か無期懲役または死刑”を求刑されましたが、スーツケースは共に起訴されたマリ人の男から渡されたものとされ、桜木被告の弁護士は一貫して「スーツケースは預かったが、中に覚せい剤が入っているとは知らなかった」と無罪を主張していました。
その後、裁判はおよそ5年、20回にわたり判決の延期を繰り返す異例の展開を見せ、ようやく11月8日に判決公判が行われました。広州市の裁判所は、桜木被告が事前に荷物を詰め替えていたことなどから、「明らかに知っていた」と認定。また、最終的な行き先が日本であることから、罪名を「麻薬運搬罪」から「麻薬密輸罪」に切り替え、無期懲役と個人財産の没収を命じる判決を言い渡しました。共に起訴されたアフリカ出身の男2人は、執行猶予付き死刑と無期懲役を命じられています。
中国の刑法では75歳以上の高齢者に原則として死刑を適用しない規定があることから、今年76歳になった桜木被告の死刑は回避されました。しかし、高齢の被告にとって、無期懲役は出所を許さない重い判決と言え、薬物犯罪に対しては妥協しない中国の姿勢を見せつけました。これには、過去の中国の歴史が背景があるようで、中国は十九世紀、英国が密輸するアヘンを厳禁した結果、英国と「アヘン戦争」となり敗北しています。それ以降、薬物犯罪の最高刑に死刑を科すなど厳しい態度で臨んでいるようです。
また、今回の事件とは異なりますが、中国では2015年以降、スパイ行為に関与した疑いなどで拘束される日本人が相次いでいて、これまでに8人に実刑判決、1人が公判中となっています。今年9月には中国政府のシンクタンクに招かれて北京を訪問した北海道大教授が拘束されました。これらの件は「中国の国内法に違反した疑い」と公表されるだけで、“いつ、どこで、何をして”拘束されたのか明らかにされていません。
桜木被告の裁判についても、2014年8月の結審以降、同法院は「案件の複雑さ」を理由に判決まで5年以上引き延ばしましたが、新たな証拠もないまま実刑判決が下されました。これはまさに“中国式法治”で、司法の独立を認めず共産党が全てを指導している“不透明さ”に日本人が犠牲になっているとしか言いようがありません。