国が整備した施設で、消火設備は、きちんとしているはずなのに…
10月31日、午前7時半すぎ、県幹部は、県庁で首里城の正殿が焼き尽くされていくテレビニュースの映像を横目に、うなだれていました。別の県幹部は、「今回の火災は、想定外だった」と声を落としていました。閉館後の正殿のように、人がいなくても火災を早期に感知し、自動的に消火するスプリンクラーは、設置されていませんでした。
首里城を整備した所有者の国によると、「正殿復元はできるだけ昔使われた材料と伝統的な工法を用いて、往時の姿に戻していく」考えが基本にありました。「厳正な復元を目指した」とスプリンクラーが設置されなかった経緯を説明しました。消火設備の妥当性については、「法律を順守した」との立場です。
被害を受けたのは、新たに確認した「奥書院」と「寄満(ゆいんち)」を含めて計9棟。うち木造の4棟は跡形もなくなっています。財団所有の1500点余りの美術工芸品のうち約450点も焼失した可能性が高いといいます。新たな設備の設置や、100万円以上の修繕は、所有者の国が担います。
今年2月、国から首里城正殿などの有料施設の管理を移管された県は、「既存施設の管理を移管された」と主張しまし。県から指定管理を受け、実際の管理運営を担う沖縄美ら島財団は、「(既存の)設備を前提に、指定管理を受けているので、これを最大限に活用して対処する」との立場です。県も財団も、スプリンクラーなど、屋内の出火に対応する自動消火設備の検討はしてきませんでした。
文化庁は、今年4月、パリのノートルダム寺院火災の発生後、文化財の防火対策の徹底と点検を呼び掛けていました。通知の対象は国宝と重要文化財の建造物で、首里城は対象外でした。
木造建築物への防火意識が高まる中でも、国や県は、体制の見直しを行っていません。県幹部は「大家さんは国だ」と例え、「スプリンクラーなど、勝手には新しい設備は付けられない」と、所有者と管理者の関係性を説明します。
設備の新設では大きな権限を持つ国ですが、防火訓練や消防計画の策定は、財団が行い、県が確認しています。財団は、夜間を想定した訓練をこれまでに実施していません。県幹部は「消防署に計画を出し、消防隊員立ち会いで訓練を実施しており、これまでに特段の指摘は受けていない」とします。県も、財団に対し、夜間訓練の実施を指導しておらず、閉館後の火災は、盲点だったようです。
内閣府沖縄総合事務局の鈴木武彦・国営沖縄記念公園事務所長は「厳正な形の復元をし、設備も自主的に追加してきた。検証結果を踏まえ、今後どういう設備が必要か検証は必要」と話しました。