脳腫瘍の治療で先月１８日から東京都内の病院に入院中の落語家、三遊亭円楽さん（６９）が１１日に東京・隼町の国立演芸場で開幕した「８月中席」（２０日まで）で約１カ月ぶりに高座復帰しました。退院はしておらず、この日は病院から外出許可をもらって出演。昨年１０月に初期の肺がんの手術から復帰した高座と同じ演目「浜野矩随（はまののりゆき）」など、マクラを含めて４０分にわたり熱演しました。
歌丸さんへ
当時よりもさらに２キロ体重が減り、５６キロになったという円楽さん。体は痩せて見え、足取りも決して軽くはない様子でした。体調は万全ではないと思われますが、それでも同所での復帰にこだわったのは落語家、桂歌丸さん（享年８１）への思いからでした。
国立演芸場の８月中席といえば、歌丸さんが長年トリを務めてきた興行です。慢性閉塞性肺疾患を患っていた歌丸さんは昨年、同公演での復帰を励みに病床で稽古を積んでいましたが、願いかなわず同７月２日に永眠されました。１カ月後の興行では三遊亭小遊三さん（７２）、桂米助さん（７１）、春風亭昇太さん（５９）らが歌丸さんに代わってトリを務めましたが、そのとき、今年のトリを頼まれていたのが円楽さん。日本テレビ系「笑点」（日曜後５・３０）では、いつも毒舌合戦を繰り広げていましたが、実は人一倍、故人のことを慕っていたのが円楽さんだったことは周知の事実です。歌丸さんが生前、大事にしてきた国立演芸場の舞台だけに「出ないわけにはいかない」と周囲に漏らしていたようなのです。
１１日の興行でも、円楽さんは自ら歌丸さんに触れました。同演芸場は、師匠である５代目円楽さんも２００７年２月に引退した場所。円楽さんは「うちの師匠が引退したのも、歌丸師匠の最後の高座もここだった」と振り返った上で「でも俺は戻ってきた。自分の本業ができるのは一番だよ」と手応えを口にしました。「きっと（病気は歌丸さんが）教えてくれたんじゃない？ 『まだこっち来ちゃいけねえよ』って。（天国に）呼ぼうとしたんだったら、ただじゃおかねえぞ」と毒舌も吐きましたが、その言葉には常に愛があります。入院中の３週間は寝たきりで、高座がリハビリになると話した円楽さん。この日、客席から飛んだ「待ってました！！」「お帰りなさい」の声は、何よりのリハビリになったでしょう。
復帰について
終演後は報道陣の取材に対応した円楽さん。主治医から「１４日までいてくれ、と言われている。明日以降、ＭＲＩの再検査をしてＯＫが出れば退院」と説明し、「歌丸師匠はここが最後の高座になったけど、俺は戻ってきた。自分の本業ができるのが一番だよ。１０日間、なんとかできそうだ」と力を込めました。関係者によるとレギュラーを務めている日本テレビ系「笑点」（日曜後５・３０）の復帰は２５日で、「２４時間テレビ４２」内の同番組を予定しているそうです。今は無理しない程度にリハビリに励み、また25日から元気な円楽さんの姿を守ることができると信じています。歌丸さんもきっとそれを望んでいるに違いないでしょう。