阪神タイガースのお膝元であり、高校野球の球児にとっては憧れの聖地である阪神甲子園球場。賑やかな声援に包まれる中で売り子さんのバイトをやってみたいと思っている人もいらっしゃるでしょう。また野球の試合を観戦しに行っているのに、売り子さんの頑張る姿に魅せられるという人もいるハズです。気になるのは売り子の仕事って儲かるのか……ではないでしょうか。
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実際、甲子園の売り子さんは殆どが女子大学生です。直近で1ヶ月の販売数のエリア順位が腕章に書かれているのを皆さんはご存知ですか。実際に働くメンバーは仲間同士が、同じ目的意識を持って笑顔で働いています。働いているところを見ても、よく通る声で「ビールいかがですか」と大きな声を張り上げつつ、常に笑顔で走りまわる姿が印象的です。ビールを購入するお客さんに対しても、丁寧にコップにそそぎ満面の笑みで爽やかに振る舞っています。会社に勤める営業マンは、ほとんどの場合ノルマがあり、営業成績が社内の壁に張り出されています。大人でさえ苦痛になるような毎月のノルマの数々。例えば車メーカーを例に挙げると、車を販売する会社だからと車を売るだけではありません。取引先のクリスマスケーキや、保険などもノルマに課しているところもあります。
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それが20歳前後の大学生で、腕に成績が張り出されるなんてプレッシャーにはならないのでしょうか。甲子園の場合は、1ゲームで、およそ200人が売り子として働いています。給料は出勤した分の固定給に加えて、ビール売上杯数ごとの歩合が基本です。ノルマとは少し違うかもしれませんが、ビールを売れば売るほど儲かるようになっているのですね。ビールサーバー内の樽には、約20杯分の生ビールが入っています。しかし20杯ならスグになくなってしまうでしょう。売り子の皆さんは、試合中に何度も樽を入れ替えて売りさばいています。
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では、なぜ腕章に販売数のエリア順位を表記しているのでしょうか。それは、それぞれの売り子さんに目的意識を持たせたいからだと話します。同じ目的を持つことで販売数や、接客サービスの向上を目指していると言います。特に新人の売り子さんの場合、腕章をしている先輩を見ながら、成長するようです。甲子園の担当者は、売り子さんに対して、接客態度・礼儀、明るく笑顔で元気な販売ができるように指導されています。
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ちなみに腕章をしている売り子さんは、樽を交換する際にリアルタイムで自分の販売数が分かるそうです。大人であれば完全にプレッシャーに感じてしまうでしょう。しかし彼女たちのスゴイところは、腕章をプレッシャーと捉えていないところです。自分なりに、また仲間同士で目標を立てて楽しんでいる人が多いと言います。確かに彼女たちの働く姿や、笑顔を見ていれば一目瞭然です。
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販売エリアは外野、一塁側、三塁側などさまざまですが、販売場所によって売り上げは変わらないのでしょうか。また本人が希望するエリアを任せてはもらえないのでしょうか。実際、エリアの希望は受けつけてもらえません。自分が指示されたエリアに愛着を持ち、そのエリアで観戦するお客さんを大切にし喜んでもらえるように考え、努力させるよう教育されています。その結果として順位がついてくるのでしょうね。
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売り子さんは、試合が始まってから終わるまで、声援に負けないくらいの声を出しています。また、お客さんのビール購入の意思表示となる、手を挙げたり視線を送ったりするジェスチャーを、見落とさずキャッチして素早く近づいていきます。そんな中でも野球ファンの観戦を決して邪魔しないようにと、ビールをコップに注ぐ際は、申し訳なさそうに前かがみ気味になったり、床にひざをついたりしているのです。
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決められたマニュアルに従うことも大切ですが、自然なカタチで観客とコミュニケーションをとり、空気を読む力も必要なのでしょう。負けているチームの方で売りさばく売り子さんは、応援者に対して「まだ試合はどうなるかわかりません。諦めず一緒に応援しましょうね」と柔軟に笑顔で言うと話します。去り際まで「いつでも呼んでくださいね」とお辞儀する姿も印象的です。ユニフォームは可愛らしいのですが、暑い夏場は汗だくで首にはタオルが巻かれています。階段の下から上まで素早く移動する一生懸命さ、ひたむきさに思わず「頑張って」と声をかけ、次もあの売り子さんから買わなきゃと応援したくなるのでしょう。