突如として、スクールバスを待つ私立カリタス小学校の児童ら20人が刺され、小学6年の栗林華子さんと外務省職員の小山智史さんの命を奪った”川崎20人殺傷事件”。岩崎隆一容疑者(51)は、児童や保護者の後方から接近し、両手に持った刃物で次々と凶刃をふるいました。1人目の犠牲者を刺してから、自殺するまで1分にも満たない、一瞬の犯行でした。
この事件により、危機感を持っているのは、40代・50代ひきこもり家庭支援組織「市民の会 エスポワール京都」を主宰する山田孝明さん。彼は「この事件で、“ひきこもり”が、さらに世間の目から冷たく見られてしまいます。僕らのやっていることも厳しい状況になるかもしれません」と話し、「池田小学校事件(2001年)や秋葉原無差別殺傷事件(08年)の犯人はまだ若く、社会とも接点があった。ところが、今回の事件の岩崎容疑者は50歳を超えているし、10年以上ひきこもっていたということですから、普通はあんな事件を起こすようなエネルギーがあるとは思えない。何かよほどのことがあって、絶望的な心境に追いつめられたとしか考えられませんね」と話しています。
岩崎容疑者は、小学校低学年の時に両親が離婚し、父親の兄にあたる伯父夫婦に引き取られました。中学は不登校となり、専門学校に通い、職を持った時期もあったそうですが、ここ10年以上はひきこもっていたそうです。同居していたはずの伯父・伯母ですが、事件後、警察が伯父、伯母に犯行時の岩崎容疑者の写真を見せて身元を確認しようとしたところ、伯父、伯母は口をそろえて「知らない」と言及したといいます。事件の前日スキンヘッドにしたため、印象が違ったとはいえ、自分の甥の顔がわからないというのは信じがたいですが、岩崎容疑者は、事件を起こすまで、同居していた伯父や伯母と顔を合わせることもほとんどなかったといいます。
高齢だった伯父伯母は訪問介護サービスを検討していたが、自宅に岩崎容疑者がいたことからそのことを”ひきこもり”がいるが大丈夫かと相談したそうです。そうすると市から岩崎容疑者の意思を確認するようにすすめられ、手紙を書いたそうですが、その手紙に岩崎容疑者は「引きこもりとはなんだ」と激怒。実際、岩崎容疑者は、手紙をもらった翌2月に、町田市の量販店で2本の包丁を購入したとみられています。
山田さんは彼の行動について以下のように話しています。
「本来なら、凶器は伯父、伯母へ向けられてもおかしくありませんが、彼は屈折したところがある。彼の部屋には過去の大量殺人が掲載された雑誌があったそうですが、絶望して死ぬことを想像した。夢想の中で、大量殺人を犯すこともあります。幼い児童を殺傷したのは、伯父夫婦をどん底に陥れようとしたのではないか」
身勝手な動機で突如命を奪われた人たちの悲しみは図りしれず、どんな理由をもってしても許されることではありませんが、なぜ引き起こされたのか根本的なひきこもりの解決が必要な気がしています。