ミスターベースボールは1992年に公開され話題になった映画です。助っ人外国人の苦悩を描いた作品で、公開から20年以上が経った今でも日本のプロ野球でプレイする外国人選手は来日する前にこの映画を見るそうです。今となってはメジャーリーグでプレイする日本人選手は珍しくありませんが、公開当時は誰もそんな選手はいませんでした。そのためより一層、日本とアメリカの野球観の違いが色濃く表れています。
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この物語の主人公となるのがトム・セレックが演じるジャック・エリオットです。ジャックはメジャーリーグのスター選手で、かつてはワールドシリーズでMVPを獲得したほどでしたが、成績が下降し不祥事を起こすなど低迷していました。そんな中ジャックはついにレギュラー争いに敗れ、所属先のニューヨーク・ヤンキースからトレードに出されてしまうのですが、その移籍先はなんと日本のプロ野球球団・中日ドラゴンズだったのです。
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助っ人外国人の孤独と葛藤
ミスターベースボールの話の根幹にあるのは、ジャックの復活劇とその周囲の人々との交流です。
メジャーリーグへの未練を残していたジャックは当初、日本の文化や日本の野球に馴染めませんでした。これはジャックに限った話ではなく、海を渡って日本にやって来た外国人選手なら誰もが経験することです。特に外国人選手にとって日本の野球とは、これまで経験してきた野球とは全く相容れないものです。全体練習時間の長さ、4番でも送りバントをする野球観の違い、精神論を第一に考えるやり方、マナーの違いなどなど、助っ人外国人の苦悩をミスターベースボールは絶妙に描写しています。「野球」と「ベースボール」の違いへの戸惑い、「アメリカ人」ではなく「ガイジン」であることへの孤独など、助っ人外国人ならではの感情を汲み取ることが出来ます。
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知らない土地で馴染むには?
日本に馴染めないジャックはフラストレーションが爆発し、試合中に乱闘事件を起こして出場停止処分を受けてしまいます。そんな折、ジャックの前に謎の日本人美女・ヒロ子が現れます。ヒロ子はジャックに「日本は外国のいいところを上手に取り入れるの」と言い、ジャックを連れ出して様々な日本文化に触れさせます。実はヒロ子は高倉健が演じるドラゴンズの監督・内山の娘で、ジャックが内山の希望で獲得されたことを知ります。内山やヒロ子、チームメート、通訳の西村など周囲の人々によってチームに馴染んでいき、お互いを理解するようになります。
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このシーンでは日本に限らず、知らない土地で生きて行くにはどうすればいいかを教えてくれています。海外へ行くとどうしても自国の文化を第一に考えてしまいますが、その土地の文化に触れなければその良さは分かりません。違う文化を認めて良いものは取り入れること。そうすれば周りの人々をお互いに理解することができ、孤独ではなくなること。シンプルですが真理を、ミスターベースボールは伝えているのです。
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野球シーンの凄さ
ミスターベースボールの素晴らしい点は、野球シーンにあります。ナゴヤ球場に10万人のエキストラを動員して撮られた試合の愛ーンは臨場感たっぷりです。また野球映画では役者たち本人の野球技術が低く見ていて興醒めすることが多いですが、ミスターベースボールでは役者たちの野球技術が高く、白熱した試合シーンに説得力があり見ていても興奮することができます。内山監督を演じる高倉健の迫力もものすごいです。
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その後日本に馴染んだジャックは調子を取り戻し、ドラゴンズはついに優勝を決める大一番の試合を迎えます。その試合でジャックが取った意外な行動とは?続きが気になる方は是非、DVDなどをご覧ください。必見です。