一時期日本中を席巻した「STAP細胞」大発見の報道と、その後の取材で一躍「リケジョ」の星となって尊敬を集めた小保方晴子さん。夢の万能細胞の発見ということで、難病や障害を抱える患者やその家族にとっても明るいニュースになりました。
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ところが事態が進むにつれて、その仮面は剥がれ落ちていきます。まず、STAP細胞自体が実在しないのでは、という疑惑。別の理由で幹細胞が発光する現象を小保方さんが「STAPだ」と誤認していた、あるいはでっちあげたと科学界では見られており、現在も各国でその検証や再現の努力は続けられています。しかしご本人による再現実験は失敗に終わり、確定は難しいもののSTAP細胞の発見はなかったものとして良いでしょう。有名な会見での「STAP細胞はありまぁす」という言葉にしても科学的根拠は一切述べないものであり、彼女は日本中から猛バッシングを浴び、退職に追い込まれました。この事件にはこういった科学的な側面の他のもう一つ、「研究費流用疑惑」という面が存在します。
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そもそも小保方さんがマスコミに取り上げられるきっかけを作ったのは、彼女にとって「先生」である日本では有名な学者の笹井芳樹氏。
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笹井氏は国内外で数々の実績を持つ学者として知られ、理化学研究所の支部の責任者でもありました。笹井氏はカラフルな研究室や割烹着とブランド服を着た小保方さんを理系女子、リケジョとしてマスコミに売り込み、加えてSTAP細胞の発見も喧伝します。その狙い通りに一躍全国的に有名にはなりましたが、有名になった結果自らの問題点もつつかれることになってしまいます。
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まず、疑われたのは小保方さんとの男女の関係。学者として学歴も実績も劣る彼女が理化学研究所に入れたのも笹井芳樹氏の声掛けがあったそうで、その理由は明らかにされていません。また研究費を使って小保方さんと笹井芳樹氏は何度も「出張」に出かけており、男女の仲だったのでは、ただの旅行なのではという疑惑が持ち上がります。研究室に置く家具も一つ数十万円もする外国製の高級家具であり、これにも注目が集まりました。
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そもそも理化学研究所は完全な私立研究所ではなく、行政法人であるため運営には当然税金が含まれます。その使い道が非常に雑で私用が疑われる状況ではあり、それに加えて大々的に発表したSTAP細胞が「なかった」わけですから世間の矛先は笹井芳樹氏にも向かい始めます。
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実はこの頃、京大の山中教授がips細胞でノーベル賞を受賞するなどして実績で遅れをとっていた笹井氏は焦っていたとも言われ、実在が定かでないSTAP細胞を認めるような発言をして世間の注目を集めたとも言われています。小保方さんは独身ですが笹井芳樹氏は妻帯者ですから、もし男女の仲があれば不倫ということになります。加えて研究費の私的流用疑惑、STAP細胞の承認による学者としての経歴のキズ、等々がマスコミから追及されそうになった矢先、笹井芳樹氏は研究室内で自殺しているのを発見されることになります。
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遺書には小保方さんを励ます文言があるものの、この自殺によってさまざまな不正への弁解もせずじまいになったことでさらに疑惑は深くなりました。この後小保方さんは大学時代の論文に盗作も見つかり、お粗末な研究ノートが暴露されるなどさらに窮地に追い込まれることとなります。たしかに未だに「STAP細胞の実在」は科学的に否定はされていませんが、この騒動にいくつかの不正があったのは確かでしょう。笹井芳樹氏の死でウヤムヤになってしまった部分もあるため、氏に対しては「逃げずにきちんと説明責任を果たしてほしかった」という声も。後味の悪いこの事件ですが、これによって襟を正した科学者も多く、そういった方面では意義のある影響があったと言えるでしょう。