舌鋒鋭く納得の出来ないことに噛みつき、論理で相手をねじ伏せる様は賛否両方ありましたがとても痛快でした。気難しいおじさん、できれば関わりたくない人、芸能界の知性など様々なイメージを持たれる上岡龍太郎は、その引き際でも注目を集めます。
50代での突然の引退発表。周囲の度肝を抜きます。1997年に引退を公表し、宣言通り2000年4月に綺麗さっぱり引退をします。以降テレビに顔を出すのは世話になった人の葬儀の席くらいで、本当に姿を見なくなってしまいました。引退のきっかけになったのが自身が司会を長年勤めた「探偵ナイトスクープ 」ボイコット事件だと言う説があります。
写真:テレビ朝日
「恐怖の幽霊下宿」
常々霊能者や幽霊の存在を真っ向から否定していた上岡龍太郎ですが、この日のナイトスクープの「恐怖の幽霊下宿」に噛みつきます。
内容は検証というよりかなりおふざけに近いもの。VTR終わりでスタジオに戻った時いきなり怒り始めます。なんの実証にもなっていない、お化けはいると言いたいのか、視聴者にどんな影響を及ぼしたいのか、ディレクターは何を考えている、と収録が止まるほど激怒します。そしてついには、こんなことは絶対に許せないとボイコット、帰ってしまったという事件です。これが直接引退に繋がったという向きは薄いようですが、自分の時代の終わりを感じていた時期ではあったようです。
引退の決め方は何だった?
写真:ミドルエッジ
若手に挨拶されて、挨拶を返す、だがその後会話が続かない、という状況になった時、上岡龍太郎はふと気付きます。自分が若手の時、大御所に挨拶をしてもその後が続かないという状況があったことを思い出したのです。自分がその位置に来たことを痛感した上岡龍太郎は、引き際を意識したといいます。その他容姿や滑舌の衰えなど諸説ありますが、近年新たな説がメディアを賑わせました。
写真:デイリースポーツ
上岡龍太郎が奥さんとテレビを見ていて、ベテランタレントが滑舌の良くない状態でしゃべる様子を見て、自分は衰えての引退は嫌だ、あんなになる前に引退するから時期が来たら言ってくれと話します。すると奥さんは、「今やで」と返します。それで決断したというものです。テレビ番組で芸能レポーターが本人に聞いたと語っていました。引き際の美学とも言うべき引退の決め方です。
引退した後は?
写真:ももクロまとめ速報
引退した後はゴルフにいそしむと語っていた上岡龍太郎ですが、本当に綺麗さっぱり芸能界から姿を消してしまいます。活動休止や部分的な引退、セミリタイヤなどの形をとる芸能人が多い中、見事な、美しい引き際です。今は、本人も言っていた「たんまりの貯金」で悠々自適な生活を送っているようです。
横山ノックの葬儀の席ではその軽妙な語り口が衰えていない様を見せて、往年のファンを喜ばせました。引き際のあり方としてどうあるべきかという新しい形を見せてくれた上岡龍太郎。いまだに復帰を望む声が多く聞こえてくるパラドックスも、不思議と納得できてしまいます。