だし汁を美味しく作ることができれば、料理のレベルも格段に上がります。多くの人が挑戦しているわけですが、ちょっとした間違いで素材の持ち味を台無しにしてしまうことが少なくありません。確かに手間と根気が必要な作業ですが、美味しく作るコツは要点を把握しておけば分かります。
和風のだし汁は?
和風のだし汁は、昆布と鰹節を一緒に使う形式が広く普及していますが、これは旨味を十分に引き出すためには理想的な組み合わせです。鰹節の旨味を構成するイノシン酸は、昆布の旨味成分になるグルタミン酸と合わさると、相乗的に美味しくなる性質があります。
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鰹は脂肪分が豊富な魚ですが、鰹節の発酵中に微生物が分泌する酵素の影響で脂質が分解されますから、鰹節のだし汁は旨味が豊かでありながらも軽快な後味になります。牛骨や豚骨のだし汁と比較しても、繊細な味わいが際立っています。
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鰹節と昆布のだし汁を作るときには、最初には昆布を水に浸した状態で加熱していきます。ここで重要になるのは、硬水よりも軟水うことです。硬水でも作ることは可能ですが、旨味成分を十分に引き出すことは難しくなります。京都や大阪などの関西地方では、軟水を使って繊細な昆布だしを作ることが有名です。水が沸騰した段階で昆布を取り出して、次には極薄に削った鰹節を入れます。この直後に煮立たせると臭みや雑味が出ますから、すぐに火を止めて濾してください。こうすることで、日本料理の椀物や鍋料理で使えるだし汁が完成します。
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コクのあるだし汁を作るためには?
和風でコクのあるだし汁を作るために、薄削りの鰹節ではなく、厚削りの鯖節や鰹節を使うことがあります。鰹節を水に浸した状態で長く煮込み続けると、蕎麦つゆとしても使えるだけのコクが出てきます。このだし汁にも昆布を加えると、さらに強いコクが生まれることになるわけです。
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そば屋ではこのだし汁をベースにして、かえしと呼ばれる調味料を加えて、深いコクのあるそばつゆを作ります。このだし汁のコクを活かして、家庭では鶏団子が入った鍋料理で使うこともおすすめです。
フランス料理のだし汁
フランス料理のだし汁はブイヨンとも呼ばれ、フォン・ド・ボーの名前を知っている人も多いと思いますが、野菜だけで作るだし汁があることを知らない人もいるはずです。
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このブイヨンは人参や大根の皮のように、いつもは捨ててしまう野菜で取ることができます。野菜を細かく刻んでから鍋に入れて、水からゆっくりと煮込んでいきます。そうすると、野菜が持っている美味しさが溶け出して、最良の旨味を持ったブイヨンが完成します。これを使ってポトフを作ると、植物系とは思えないほどに複雑な旨味を楽しめます。