たった40秒。その一瞬親が目を離したすきに、音もなく子供が消えた不可解な事件があります。1989年3月7日、徳島県つるぎ町で当時4歳の男の子T君が音もなく突然姿を消しました。たった一瞬のそのすきに何が起きたのかー。30年たった今もう一度事件を振り返ってみようと思います。
30年前の1989年3月7日、男の子の一家は徳島県小松島市で行われた親戚の葬儀に参列した後、貞光町の親戚宅に泊まりました。そして翌朝8時頃、T君は姉と弟と父親、更に従兄弟の5人で散歩に出かけましたが、まだ朝食前だったこともあり、父親は10分ほどで散歩を切り上げて帰ることにしました。男の子は兄弟とはしゃぎながらも父親のあとをついてきていました。
そして家の玄関まであと10メートルほどの場所までT君がいたことを父親は確認しています。この時、T君はまだ散歩をしたそうな顔をしていたため、父親は家の中に入り、抱いていたT君の弟を母親に預けると、玄関先にまた戻りました。するとそこで遊んでいたはずのT君はいなくなっていました。それは父親がT君を最後に見てからたった40秒後のことでした。
すぐさま姿がみえないことがわかった父親は周辺を探しましたが、T君を見つけることは出きず、家族・親類・地元の消防団の協力も得て、近所の捜索を続けたが結局見つからず、父親は午前10時に警察に通報しました。
当初は親戚宅が山間部にあることから、警察はT君が山で迷子になっているのではないかと思い、この日のうちに山間部での大捜索が行われました。その捜索には、地元警察のほかに、県警機動隊、消防署員、地元消防団員、地元住民が集まり、総勢100名近くの人が動員されましたが、男の子をみつけることはできませんでした。
またT君は4歳でしたが、住所・電話番号・年齢・家族構成までしっかりと離すことができたということ、さらに父親が目を離した1分足らずの間で、玄関先にいた子供が音もなく消えるという不可解な事件だったために、世間では「神隠しのようだ」という声まで上がりました。
しかしこの不可解な出来事はこれだけにとどまらず、失踪から9日後の3月16日、家族の元に奇妙な電話がかかってきました。電話の相手は「ナカハラマリコの母親」を名乗る女性で、「●●幼稚園の父兄です、幼稚園で見舞金を集めたので送り先を教えて欲しい。もう帰って来ますか?」とたずねてきました。不審に思いながらも翌日自宅に帰る旨を伝えましたが、その後数日たっても、ナカハラマリコの母親から連絡はありませんでした。
不思議に思った母親が幼稚園に問い合わせてみたところ、ナカハラマリコという名前の園児は存在していないことが判明し、また結局、この奇妙な電話は事件解決の手掛かりとはならず、何の意図があったのかも未だに謎のままです。
その後事件に関する手がかりはつかめませんでしたが、ある男性がこの男の子ではないかと突然浮上しました。それが、2018年1月31日に放送された『緊急!公開大捜索’18春〜今夜あなたが解決する!記憶喪失・行方不明スペシャル〜』(TBS系)に出演した記憶喪失の男性(推定年齢25歳)がT君に容姿が似ているというものでした。この男性は、4歳頃から知らない人に軟禁されていたと話しており、4歳の時に失踪したT君と状況が酷似していたのです。こうした反響により警察はT君の両親に連絡を取り、両親のDNA採取の了解を得ましたが、DNA鑑定の結果、T君の両親と記憶喪失の男性のDNAは一致しないことが判明しました。
やっと現れた希望の眼差しは泡となり消え、結局、2019年現在もT君の行方は分からないままです。たった40秒、そんなに一瞬の時間に何が起こったのだろうか。