12年間 狼との生活をした男性
動物に育てられた人間は、人間の暮らしに戻った時、幸せを感じることができるのでしょうか?
マルコス・ロドリゲス・パントーヤさんは7歳の頃から12年間、狼とともに生きてきました。
しかし現在70歳を超えた彼は人間と暮らしに失望し、今までの人生で幸せだったのはオオカミと暮らした時期だと言うのでした。
親に捨てられた過去
1946年、コルドバ、アニョーラで生まれたパントーヤさん。
彼の母親は、彼が3歳の頃になくなりました。そして、彼の父親は別の女性と結婚し身寄りのない彼を捨てたのでした。その後、まだ幼かった彼は年老いた羊飼いに身売りされ、羊飼いの後を継ぎ、300頭の羊の面倒を見るようになったのでした。老人から火の起こし方や道具の使い方を学びながら暮らしましたが、彼がまだ8歳にも満たない1954年、羊飼いは亡くなり、独り取り残されることになったのです。
その後 一緒に暮らしたのはオオカミだった
パントーヤが野生の狼と暮らすようになった経緯は、なぜなのか、いつの頃からだったのか、はっきりしていません。しかし12年後に治安警察隊が彼を発見した時、パントーヤは人語の代わりに動物のような唸り声を発するようになっていたのでした。彼は人間界に連れ戻されれましたが、人間との暮らしに馴染むことはありませんでした。ある時は、狼たちの許に帰ろうとさえしました。しかし一度人間界に戻った彼を、狼たちは受け入れられることはありませんでした。
「すぐそこにいるのは分かる。息遣いも聞こえる。それで鳥肌が立つ…でも姿は見せちゃくれない」
「狼がいて、呼びかけるとちゃんと返してくれるんだ。でも近寄ってはこなかった。私から人間の臭いがして、コロンもつけていたせいだな」
と最近パントーヤはエルパイース紙で語ってます。
幸せだったオオカミと過ごした時間
彼の人生で一番幸せだったのは、「オオカミと過ごした時間」。そこにいたメス狼は彼の人生で初めて母親としての愛情を示してくれました。また、子狼たちも彼を兄弟として受け入れてくれたのです。危険の多い森の中で、彼に自然の中で生きる方法を教え、時には食べられる木の実やキノコあるいは毒入りのものを示してくれました。彼等はコウモリや蛇が潜む洞窟の中で眠りました。また彼は、大地を裸足のまま全力で駆け回った頃を今でもハッキリ覚えています。
「走れないのは雪で痛くなってしまう時だけだ。足には大きなタコができて、岩を蹴るのなんてボールを蹴るようなものだった」
人間の暮らしに失望する日々
オオカミと過ごした日々は、53年前に終わりました。それからパントーヤの失意の人生となったのです。
彼は人間に騙されたり虐〇されたりしたこと、介護や建設の仕事で上司に利用されたことを語りました。サッカーや政治について詳しくないことを人から馬鹿にされることもあるといいます。しかし、少なくとも隣人の何人かは仲間として受け入れてくれたことが嬉しいと語ります。また子供たちとおしゃべりしながら、動物の素晴らしさや環境を守ることの大切さを話すことが好きだといいます。アミーガス・ダス・アルボレスは時折彼を学校に招き、生徒たちに話をしてもらっているようです。
パントーヤが今、一番落ち着ける人間は子供なのです。
まとめ
パントーヤは動物に育てられた人間というほとんど前例のない稀有な事例です。
これまで人類学や本の題材として度々研究対象とされてきました。
オオカミと過ごした以上に、幸せを感じれる日がいつか来るのでしょうか?
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