60年代後半にツィッギー旋風が巻き起こしたミニスカートで、女性のファッションは軽やかに自由になりました。そして70年代に入ると、ファッションは更に多様化してきました。
人々は思い思いのファッションを楽しむようになり、「個性」が尊重され、かつ許されるようになりました。
戦後の貧しかった時代から高度成長へと変わり、豊かになった時代背景もあったのかもしれません。人々の心に、自由を楽しむ余裕と寛大さが生まれたのでしょう。
■画期的だったジーンズの流行
「イッセイ・ミヤケ」や「ケンゾー」など、日本人デザイナーが羽を広げて世界に羽ばたいたのも70年代です。
彼らが発表した多くのコレクションは、世界中の女性から支持されました。
画期的だったのは、ジーンズの大流行です。
それまでは作業着としての扱いだったジーンズが、ハイファッションデザイナーの発表したコレクションのお陰で、お洒落なアイテムに変わり、男性も女性もこぞってジーンズを愛用するようになりました。
腰から膝まではタイトで、膝から裾に広がるベルボトムジーンズを長めに履いた若者が街を闊歩しました。
ちょうどその頃は反戦ブームで、ジーンズを履いて反戦歌を歌うシンガーソングライターたちが世界各地に現れて、若者たちから崇められていました。
それまでの歌は作詞家・作曲家が作った歌を歌手が歌うというスタイルでしたが、自分で作詞作曲した歌を自分で歌うシンガーソングライターが現れたのです。
日本の若者も我も我もと自由に歌を作り、電波に乗って活躍を始めました。
そして、ジーンズ姿がシンガーソングライターの定番になっていました。
男性の長髪の流行とともに、中には眉をひそめた大人もいましたが、というよりほとんどの大人はそうでしたが、ジーンズはすっかり市民権を得るようになりました。
■自由に個性的に楽しむファッション
フォークソングが流行したのも同じ頃でした。
同時に、ケンゾーが発表した世界各地の民族衣装をテーマにし、女性の優しさや可愛らしさを引き立てるフォークロア・ファッションが、世界中で人気になりました。
ジーンズとは対極にあるニュー・トラディショナル、略してニュートラや浜トラも学生の間で流行し、はたまた足にピタッとしたホットパンツも流行り、ミニスカートも相変わらず健在でした。
つまり、70年代には様々なファッションが席巻していましたが、若者は自由に、流行を取り入れつつ、個性的なファッションを楽しんでいました。
■アンノン族
40年代から50、60年代まで続いた戦後の混乱期を経て、経済が成長し自由を謳歌できるようになった70年代は、ファッションをも解き放った時代といえるでしょう。
70年代に相次いで創刊されたファッション雑誌「アン・アン」と「ノンノ」もそれに拍車をかけました。ファッションだけでなくお洒落なライフスタイルや旅行の提案など、それまでにない雑誌は若い女性の心をとりこにしました。
それらの雑誌を持っているだけでお洒落度がアップし、「アンノン族」という言葉を生み出しました。
まさに70年代のファッションは、自由を謳歌できるようになった時代の象徴ともいえるでしょう。